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2009年5月

『スマイル』

 大人になると難しくなることの一つに、TVの連続ドラマをフォローすることがあると個人的に思っている。それでも今期は石井康晴がメインの演出を務めるTBSのドラマ『スマイル』を観続けている。 

 社会派、というにはちと甘い設定が散見される気もするが、近未来から現在を振り返り、そこに至るまでに何があったのかを謎とサスペンスで引っ張る構成は魅力的だし、そういった点を含めてオリジナルで面白いものを作ってやろうという制作者側の意欲が感じられるドラマだと思う。 

 主演は松本潤。小栗旬も出演している。ドラマも映画も大ヒットした『花より男子』でも共演した2人だが、それぞれ「花男」とはがらりと変わったキャラクターを演じている。松本潤はフィリピン人と日本人とのハーフで、いつも貧乏くじを引かされるタイプの純真な若者。いっぽう小栗旬は映画『クローズzero』の憎めない不良役とも趣の異なる、いわば「本物のワル」。このコントラストがなかなか楽しい。 

 せっかちな人間としては早く結末が知りたいところだが、四半期に1作くらいなら、1週間気を持たせられるのも悪くない。今夜は第7話。いよいよ佳境にさしかかりつつある感じだ。

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「春を奔る」

 現在発売中の『小説新潮』6月号の特集「ビジネス小説最前線」に「春を奔る」という短編が掲載されています。日本ファンタジーノベル大賞の優秀賞受賞後初の小説作品です。 

 主人公は、探偵事務所で試用期間中の、佐藤生良(いくら)という若者。当初はもう少しトリッキーなミステリーを構想していたのだが、本物の私立探偵の方への取材をセッティングしてもらってお話を聞くうちに、私立探偵を主人公にしたリアルな「お仕事もの」というのも面白いのではないかと思い、その方向へとシフトさせた。 

 なんて簡単に書いているが、けっこう苦労した。初めての短編で、感じをつかむまでにまず時間がかかってしまった。しかも至るところが粗く、ブラッシュアップをくり返すことでようやく少しずつ形になっていった。

 と書けばまるで自分ひとりが苦労したようだが、直しのたびにその都度的確な指示を与えてくれ、最後の最後まで妥協せず忍耐強く併走してくれた編集者のそれはいかばかりであったろうかと、むしろそのことが心に残っていたりする。

 送られてきた掲載誌を開いたときの喜びは、長編が単行本化されたそれにも劣るものではなかった。何事にも初めての瞬間というものがあり、どれだけ生きていてもそうした瞬間というのは特別なものなのだな、と思った今日この頃の里見です。

 

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『CAPTAINアリス』

 講談社『イブニング』誌上で高田裕三先生の『CAPTAINアリス』という漫画の掲載が開始された。僕は企画協力という形でお手伝いをさせてもらっています。 

 高校生のとき『ヤングマガジン』で『3×3アイズ』の連載が始まって、僕の周りでもたちまち熱狂的なファンが生まれていたのを昨日のように思い出す。まさかその高田裕三さんとお仕事をさせていただける日が訪れようとは。人生とはわからないものだ。 

 『CAPTAINアリス』は女性パイロットが主人公の漫画で、この仕事のために僕が多大なるご助力を賜っている現役のパイロットさんは、中学高校時代の部活の先輩である。へなちょこ部員として厳しい指導を受けていた頃は、大人になってまでこうした形でお世話になろうとは、もちろん夢にも思っていない。たぶんお釈迦様もわかっていなかったのではないか。人生って、不思議なものですね。

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白浜へ・その3

 <リブロス>から<ル・ファーレ白浜>に戻ったのは、夜の6時過ぎ。コテージに入ると2階のキッチンから料理を作っているいい匂いが漂ってきた。じつは、この日の夕食はイタリアンの出張シェフにお願いしていたのだ。

 <ル・ファーレ白浜>では、和食や中華料理やピザなどのデリバリーが頼める他、日本料理とイタリアンの出張料理のサービスも行っている。それは素敵だ、と思い、恵子ちゃんに手配してもらった。 

 仕込みは4時半頃から。留守にしていてもこうして準備をしてもらえる。キッチンには、シェフの宇田川氏とアシスタントを勤める宇田川夫人のお2人がいらした。出張料理をお願いするなど初めての経験なので、興味津々、ひとまず持参のスパークリングワインを開けてあれこれとお話を聞く。シェフは忙しいので、気さくな夫人が主に会話の相手をしてくれた。 

 宇田川氏はふだんはイタリア料理店で働き、休日に出張シェフをしているという。料理は地の魚や野菜を中心にしたもの。すぐに登場した前菜は白浜ではこれが一番のお勧めだという鯵を使ったカルパッチョだった。旨い。たしかにここでなくては食べられない味だと感じた。メインには栄螺(さざえ)と胡麻鯖が出た。どれも書いている今思い出しても生唾が湧いてくる。 

 ちなみにお値段だが、他にサラダ、スープ、パスタ、デザート、それにワインが1本(赤か白かを選べる)ついて、2人で8,000円である()。ボリュームもあるし、宇田川ご夫妻のナチュラルな接客で肩肘張ることもなく、お店じゃないので時間を気にせず酒を飲んでいられるし、何よりちょっぴり非日常的で贅沢な気分を味わえることを考えると、安い……! と唸った。 

 お2人はひと通り料理の準備をすませると、あとはごゆっくり、と引き揚げていった。ワインをかたわらに果てしなくゆっくり食事をしていると、恵子ちゃんが明日の朝食にと千倉にあるパン屋さんで焼かれたというパンを持ってきてくれたので、しばらくおしゃべりを楽しんだ。 

 彼女は今、もう少し海寄りの場所にコテージの第二棟を建設中で、7月には完成するという。小説家はそういう設備投資とは無縁の仕事なので、感心する。いろいろ大変に違いないのだが、それを感じさせないところにも。たぶんそれは、恵子ちゃんのビジネスが、持って生まれた彼女のホスピタリティの延長線上に自然に存在するものだ、というところが大きいのだろう。 

 <ル・ファーレ白浜>には宿泊以外のプランもいくつかあるが、月に1度、宇田川シェフがビュッフェスタイルの料理とともにワインを供する、会費制の試飲会も行われており、近在の多種多様な人が集まって盛況であると宇田川夫妻から聞いていた。文化的なサロンの趣もあるように感じられた。恵子ちゃんの本質は昔から変わっていないのだな、と思いつつ、翌日僕はこの地を離れた。 

 もちろん戻ってくるつもりだ。<リブロス>でワインも飲みたいし、今回できなかったBBQのリベンジも果たしたい。日帰りでもBBQのできる施設はあるが、車だと運転する人間は酒を楽しめない。聞くところでは、最近はキャンプ場の設備も本末転倒ではないかというくらいに充実しているらしいが、天気が悪くなったらホームシアターか、あるいはスタジオでのセッション(!)という転びようのある<ル・ファーレ白浜>のようなところはまずなかろう。夏の間に、BBQプラス1泊のプランを仲間で企画できたらいいなと思っている。 

※価格は僕が利用した時点のものなので、ご利用をお考えの方はご確認ください。

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白浜へ・その2

 千倉には、僕らと同じ学部、学科を卒業した、先輩に当たる方が経営するワインバーがあるのだと以前から恵子ちゃんに聞いていた。恵子ちゃんが僕のことを話したら、僕の小説も読んでくださったという。せっかくだからお目にかかろうと、<リブロス>というそのお店を目指して車を走らせたのだ。(→<Cafe Liblos>HPへ 

 開店したばかりの店に入ると、カウンターのなかで温厚そうな男性が迎えてくれた。店主の小宮さんだ。スペイン語で「本」を意味する店名にふさわしく、壁の一面は作り付けの本棚になっており、映画、酒、食べ物に関する書籍がぎっしり詰まっている。 

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(眺めているだけで和んでくる本棚。正面からも撮ったがピンボケだったので割愛)

 小宮さんは図書館司書というユニークな前歴を持っている。ご出身は東京。この地に惚れ込んで移住されたのだという。千倉やその近辺にはそんなふうに移り住んでくる人がたくさんいるそうで、一種の文化的なコミュニティが形作られているみたいだ。 

 GWの前半には、そういう人たちが中心となって「アート・フリーマーケット・イン千倉」という催しが盛大に行われたばかりとのこと。一足遅れで楽しそうなイベントを逃してしまった。その代わり、というか、小宮さんは、そのフリーマーケットにも出品されているイシイタカシ氏というアーティストの直筆画を見せてくれ、素敵な絵葉書を何枚もお土産としてくださった。いい人だ。 

 澁澤龍彥の全集が本棚の一角を占めている小宮さんは、もともとファンタジーがお好きなそうで、最近読んでいる小説をうかがうと、日本ファンタジーノベル大賞出身作家(僕ではありません)の最新作だった。やっぱりいい人だ。 

 僕は運転があるので今回はコーヒーを飲んだが、<リブロス>では非常にリーズナブルな値段でワインを楽しむことができる。同行者は、小宮さんの自家製スモークなどをつまみに、ゆっくりお話をする間にグラスワインを3杯も傾けていた。それもじつに旨そうに。次は絶対お酒を飲まない人の運転で連れてきてもらおうと固く誓い、お店を後にした。

(その3へ続く)

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白浜へ・その1

 ゴールデンウィークに、2泊3日で南房総の白浜へ行ってきた。 

 学生時代からの友人である山口恵子ちゃんが、この地で昨年の春から<ル・ファーレ白浜>という貸し別荘を経営している。 (→<ル・ファーレ白浜>HPへ 

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(<ル・ファーレ白浜>1階の図書室。僕の著書も飾ってくれていた) 

 日本ファンタジーノベル大賞のお祝いに1泊をプレゼントしてくれるという、うれしい申し出をいただき、お言葉に思い切り甘えてGWというハイシーズンに予約をお願いしてしまった。もちろん、もう1泊は自腹です。

 彼女が住む白浜は僕にとって思い出の地である。学生時代に友人たちと作っていた草野球のチームで初めて合宿をしたのが、恵子ちゃんのご実家なのである。おまけに恵子ちゃんのお父さんは、知人の方々に声をかけ、草野球チームを編成して球場を借り、僕らのチームとの試合の段取りまでしてくださった。すごいのは、この合宿にスケジュールの都合で恵子ちゃんは参加せず、恵子ちゃんのご家族と僕たちとは初対面だったということだ。 

 度量の大きなご家族なのである。もちろん当時は貸し別荘など経営していない。僕らは普通に恵子ちゃんの友人として泊めてもらい、試合の後にはバーベキューまでごちそうになったのだ。それにしても、昔から人のご厚意にはとことん甘えてしまう性質なのですね、私は。 

 コテージにはバーベキューのできるスペースがある。天気がよければ初日はここでバーベキューを楽しむつもりだったのだが、あいにくの雨。 

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 (本当はここでBBQができる。写真は最終日に撮った) 

 大きなリビングダイニングで持参してきた映画のDVDを観ながら持参してきた酒を飲むうち夜になり、中華料理のデリバリーを頼んでさらに飲むうちに初日の晩はあえなく沈没。どうも疲れが溜まってたらしい。 

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 (リビングダイニングからの眺め。これも最終日に撮った。かろうじて雨が上がっているけれど曇っている) 

 ちなみに、リビングダイニングのAVセットはスピーカーシステムが素晴らしく、DVDも臨場感たっぷりに楽しめた。これがホームシアターってやつ? オーナーのこだわりが感じられた。 

 そうそう、いい忘れたが山口恵子ちゃんは音楽をこよなく愛する人でもあって、この<ル・ファーレ白浜>もおそらく一番の売りは1階に作られているスタジオなのだ。レコーディングもできる本格的なスタジオで、音楽をしない僕には宝の持ち腐れだが、大人がバンド合宿をやるには最高の環境だろうなあ、と思った。 

 2日目も雨。南房総は温暖な土地だ。天気がよければウッドデッキで日向ぼっこでもしようと思っていたのだが、残念ながら断念。

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 (ウッドデッキ。右に見えるのはお風呂。もちろんこれも最終日に撮った) 

 館山の駅でレンタカーを借りてドライブをした。GWの最終日だが、どこでも渋滞に遭わなかったのは雨のおかげか。房総フラワーラインと呼ばれる海沿いの道を走って、夕方には白浜から30分ほどのところにある千倉へと向かった。

その2へ続く)

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